アスキービジネス

ABO:ビジネス+IT=∞

ビジネス+IT=∞

 |  2007年04月  |  次へ>


 過去3回にわたって紹介した、元ゲームクリエイターの清水正治社長率いるミオソフト。画期的な不動産業務支援ソフト「mioCube」を開発し、これが関西では約3分の2のシェアを誇る。高卒後、すぐに名作パズルゲーム「倉庫番」のバージョンアップにも携わった、プログラムの達人の清水さん。その経験に裏打ちされたのが、これまでそのすばらしさを紹介してきたmioCubeである。

 だが、「ローマは1日にしてならず」。ゲームソフトメーカーをやめて次に移ったビジネスソフトメーカーで、清水さんは住宅情報誌向けシステムを担当。当時はスキャンするのが一般的だった間取図を描けるソフトを開発。その販売を考えたが単体では売りにくいので、不動産業者向けにチラシ作成と地図作図ソフトを新たに開発し、それらを1995年頃にパッケージで発売。これがmioCubeの雛形となった。

 同ソフトは1300社ほどが導入するというかなりのヒットになったが、当時はまだインターネットも存在せず、複数の端末で店舗スタッフ全員が使えるようなツールがまるでない。現在の形のmioCubeを実現させるには至らず、その理想を抱え込みつつ、清水さんは雌伏の時を迎えた。

 「システムは継続するし、途中で辞めるのはあまり好きじゃない」と清水さん。独立が脳裏にちらつく一方、営業責任を負う社長にはなりたくない、表に出ないナンバー2でいたい、という気持ちが強かった。しかし、作りたいソフトは作らせてもらえないジレンマに、次第に理想と現実のギャップは開き、「躁鬱みたいな状態」まで陥った。そこで清水さんは思い立った。

「元々、なにをやってもアウトローだったんだ……」

 父は神戸大工学部卒で、さる電機メーカーの技術部門のトップまでいった設計技師。親戚の多くが一流大の理系から大手企業の要職に就いていた。エリート一家の育ちである。自身も灘中を目指し学習塾にも早くから通わされた。その一方で、書道を習った塾の塾長がパソコンマニアで、幼い清水さんは「見込まれて」しまう。ゲームで遊ぶのを餌に、基盤剥き出しのボードPCを製作し、プログラム言語BASICを覚えた。「自分で考え、作れる」感動に勉強もそっちのけでのめり込んだ。

「だから正直、学歴コンプレックスもあります。屈折していた時期が長く、20代後半までは精神年齢も低かったようにも思う。ただ、プログラムで評価される喜びが自信に繋がり、いい意味で、つねに飢えている状態が保てるようになった」

 目に見えるレールを進む仕事ではないが、いわば「アーティスト」として認められた自分を客観視し、ついには誰にも「責任を転嫁できない」立場を目指した清水さん。既成の学校の外に求めた学びの場は、彼を結果として逞しく育てたのだ。

 今、ミオソフトは創業5年目を迎え、強力なライバル会社がシェアを席巻する関東に乗り込んできたところだ。まだ社員も13名という小規模だが、大手不動産会社との提携を視野に、いっそうの拡大を目論んでいる。いずれ、その成果を続報としてお届けすることもできるだろう。


 不動産業務支援ソフト「mioCube」の開発者であるミオソフト社長の清水正治さんは、元ゲームクリエイター。前回は、物件の様子が一望できるパノラマ3D、マウスで雑作なくできる間取り入力などにその“技”を見たわけだが、この間取り図がまた(特選物件に限ってだが)3Dアニメとして立体化される。この部屋はむろんカーソルで自在に歩き回ることが可能で、椅子やカーテンの配置もできる。さらに、朝・昼・夜の光の加減も見られるのだ。こうなると自分が実際に住まなくても、「こんな部屋に住みたい」をバーチャル体験するという、別の目的すら満たせてしまう。

 急の転勤であればいざ知らず、普通の引っ越しであれば、事前に十分な検討期間を持つ人が多いはずだ。ちょくちょく希望のエリアまで出かけ、このソフトの持つ遊び心にひかれてシミュレーションで居住を楽しむうち、その不動産業者に“行きつけ”の感覚を持つ。これからの不動産業者はそんなニーズも積極的に吸い上げ、顧客との息の長い関係を築くべきだろう。また、同業者間のネットワークもこれまで以上に重要になってくる。そのためにも「ワンソース、マルチユース」の簡易なこのソフトが、よき仲介役となってくれるはずだ。
 さて、この愉快なソフトを創った清水さん。プロのゲームプログラマーとしてのスタートはなんと、宝塚市を拠点としたPCゲーム黎明期のメーカー「シンキングラビット」だった。中学時代からすでにプログラムの神童ぶりを発揮していた清水さんは、高卒後スカウトされ同社に入社。名作パズルゲーム「倉庫番」の続編である「倉庫番Perfect」の企画やプログラムに携わった経験を持つのだ。
 このゲーム、まったく遊んだことのない人はいないと思うが、1つの二次元空間に散らばった荷物を、壁と通路を考慮しながら決められた場所に集めるという単純明快で奥の深いルールに基づく。だから、平面の間取りが立体化し、自在に“プレイヤー”が各部屋を歩き回るというmioCubeの3Dアニメはまさに、清水さんのゲームクリエイターとしての成長そのものを反映している。
 清水さんは同社にアルバイト時代を含め2年ほど在職し、次にビジネスソフト開発メーカーに転じた。そこでmioCubeの雛形となるソフトを生みだし、そこそこの成功も収めるのだが、そこからまた多難の時期を迎えるのだった……。


 不動産業務支援ソフト「mioCube」を開発したミオソフトは、社長の清水正治さんのゲームクリエイターとしての経験が実用に活かされていることで注目すべき会社だ。
 僕が品川の同社東京オフィスを訪ね、まず最初にデモンストレーションで見たのが、物件の様子が一望できるパノラマ3Dによる画面。これはミラーボール状の特殊カメラを持ち込めば誰でも撮れるそうだが、マウスを動かして360度全方位から部屋の様子が確認できる。デモには周囲の環境も同様に映像に取り込まれ、その臨場感たるや、実際に現地に足を運ぶのも同じである。
 清水さんによれば、物件探しの要諦は駅からのアクセス。そこで、昭文社のデータベースがプリインストールされ、住所を入力するだけで物件を中心とした周辺地図を自動表示する機能が標準装備されている。駅への最短経路も線で示され、即座に所要時間も弾き出され、最寄の駐車場などのチェックもたやすい。まずこれを見て、業者は片膝を乗り出すという。
 また、ネットでそのまま登録物件を公開できるシステムなので、あらたまったサイト作成の必要をなくし、管理・更新の手間も著しく軽減しているのもありがたい。さらに、このソフトを導入したユーザー同士であれば、双方の登録物件を紹介しあうことも可能。これなど業者間の連携を深め、「Win-Win」の関係を構築していく大きな一助となるのではないだろうか。
 その登録などの作業だが、ここにも清水さんの「ゲーム体験」が如実に反映されている。使用頻度の高い語彙はあらかじめインプットされ、また自動的に登録ボタンを表示し頻出表現を学習する能力もあり、およそルーティン的な不動産の書類作り自体、ラクで楽しくと、2つの意味で「楽々」にしてくれるのだ。むろん、それらをチラシ、ポップにと出力する大量のテンプレートも用意されているので至極簡単だ。
 既存ソフトに不足していた、こうした感覚的な工夫の最たるものが、マウスで雑作もなくできる間取り入力。かつては手書きが当然で、中規模以上の会社だと営業マンからラフと情報を得て描く専属担当者もいたとか。
 その作業を僕自身やらせてもらったが、まさにシミュレーションゲームで自分の城を造る感覚だ。そして、この間取り図がまた3Dアニメとして立体化され、各部屋を行った気になって歩き回れるとしたら……?
 そう、これが清水さんの前歴と思いきりクロスする“ワザ”なのだ。ということで、次回、いよいよ本題ですが、乞うご期待!


 記念すべき連載第1回目は、私たちにとってあまりに身近なITの活用例を見ていこう。それは生活で必須の「衣・食・住」のうち、通信販売では買えない「住」と大きく関わる……。
 暮れも押し迫ったその日、僕は、かつてはただの空き地だった品川駅の港南口に降り立っていた。今ではNTT品川TWINSなどの巨大オフィスビルが建ち並ぶ、その景観の変化に惑わされながら、僕はビュロー品川という、これまたおしゃれなサービスアパートメント(ホテル型マンション)に辿り着いた。そこに今回訪ねるミオソフトの東京オフィスが入居していたからだ。本社は大阪だが、社長の清水(きよみず)正治さんがほぼ毎週末そちらに来ていると聞いて押しかけた。
 陽射しがよく入る一室はよく見れば、奥にささやかな居住スペースもある。「出張の社員が泊まれるようにと思って」と清水さん。それなら30万円ほどの家賃も高くはつかない。家具も備え付けで、清掃サービスも料金に含む。これからの起業ニーズに応える物件だろう。
 さて、2002年2月に設立されたまだ若い同社に、なぜ初回に登場してもらったかというと、その設立趣旨がまさに、僕の連載への抱負と重なっていたためだ。会社案内から少々引用させてもらうと……。

「21世紀はITを中核としたマルチメディア時代へと変化していきます。しかし現実にはまだまだIT化が進まない業界・業種も多数あります。ミオソフトは、そのような方々をはじめとするすべての人々の利便性を向上させ、社会に貢献したいと願っています」

 そして、その実際の活動もとても日常に即し、私たちの生活の便を助けている。すなわち、同社は現在、不動産業者向けにチラシ作成、物件管理、間取り図作成等々を一挙にできる、その名も「mioCube」というソフトの開発と運用に特化し、並々ならぬ業績を挙げているのだ。
 読者の多くが何回かは不動産屋を利用してご承知だろうが、今でも小さな個人業者なら、図書館で検索カードを引くようにして物件を紹介するはず。ベテラン社員が手描きした間取り図をチラッと確認し、まずは実見にあちこち連れ出されるのがつねで、時間もかかった。
 そうした情報がパソコンで一覧できる、くらいでは今どき驚きもしないが、この「mioCube」、ITはからっきし……という“パパママ不動産屋”にも徹頭徹尾親切にできている。必要最小限のフォーマットにごく簡単な入力作業をするだけで、物件を見やすくきれいに登録でき、それがそのままサイトの画面となり、チラシに援用も可能。まさに至れり尽くせりのシステムを清水さんらは作り上げたのだ。
 この清水さん、前職はなんだったかというと、ゲームプログラマというからおもしろいじゃないですか。その発想がトコトン、「mioCube」には注ぎ込まれている。現在のPC環境が元来、ゲームという遊び心から発展してきたのは衆知の事実。この「mioCube」の技術力を検証することは、実はゲームから始まったITの自在性を見ることにもなるのです。
 ということで、詳細は次回に!


2007/04/04

お知らせ
連載を始めるにあたって

 現在のITを取りまく環境は「Web 2.0」と呼ばれる時代に突入し、さらなる進化を遂げている。このブログでは、さまざまな業種が、こうした波に乗りITを活用する事例を取り上げる。
 また、ネットの世界だけで完結する小売店や銀行などが珍しくなくなる一方、それを手がかりに、より人間的なビジネスを作り出すことも可能ではないかというのが、このブログのテーマである。取り上げる企業やサービスの多くはまだ始まったばかりで、先行きは不透明な例が多い。時には、その知恵もまだ単純なアイデアの次元にすぎず、勇気もまた無鉄砲のそしりを免れない程度のことかもしれない。
 だが、読者に何らかの共感を与え、仕事に限らず、少しでも生活全般の指針となる発見ができればうれしく思う。そして、たくさんの反響をこの場に集め、新たな時代を切り拓く共通の認識が築けたら、それこそが発信者としての僕の、「知恵」と「勇気」となってくれるだろう。



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