アスキービジネス

ABO:シスタン ~システム担当を雑用係と呼ばないで~

とある会社のシステム担当者「志須山丹悟(シスヤマタンゴ)」の日々の仕事を見ながら、世のシステム担当者を応援するブログ。

2006/11/22

シス担前任者の影
その一「急な理由…にひっかかる」

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ボクの名前は志須山丹悟(シスヤマタンゴ)。
「じゃあ略してシスタンだね」なんてくだらない理由でシステム担当を押しつけられた、素人システム担当者です。

ウチの会社だとシス担は1人じゃなくて、各部署…というか各フロアから1名ずつ出すのがしきたりになっています。そんなわけで、業務上の部署とは別に「シス担グループ」なるものがあり、ボクはその一員というわけ。
いわば社内におけるパソコンエキスパートの称号というんですか、エリートの証というわけですよ。

…と、言い含められていたんですよね。

実際のとこは「名前がそうだから」だったわけですが。
すげえショック。
「まさかそんな理由が隠されていたとは!!」と、デカ字のキャプションが頭の中で踊り狂ったくらいにショックでした。

で、ショックついでに少々気になったことがあるんですよ。
自分の前任者さんってどんな人だったんだろ…と。急な理由で退職されたらしいのですが、フシギなほどにこの方の話って聞かないのです。シス担グループでも、この部署でも。

「隣の部署…の人だったんですよね? 確か」

部署が違うとはいえ、隣の部署ならフロアはウチと同じです。当然知り合いも多くいたはず。しかもシス担だったんだから、お世話になった人もいるでしょう。

なのに誰の口からも出てこない。
後任であるはずの自分の耳にも、ぜんぜんその人の名前すら入ってこない。

これはさすがに、少々不自然なんじゃないかと思いはじめたのです。

だって、もともと任命の理由からしてアレでしたから、なんか隠されていたとしてもフシギじゃありません。

「…というわけで、そこんとこどうなんでしょ?」

ところが先輩にしても課長にしても、「単に退職しただけだよ」と首を振るだけです。でも目が泳いでる。汗もドバドバ流れてる。

こうしてボクの「前任者さんの退職事情探し」は幕を開けたのでありました。


2006/11/29

シス担前任者の影
その二「後輩クンの情報網」

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幕を開けた…とはいったものの、はてさてどうしたものか。正直いって、ボクにできることなんか、今までと変わらず「周囲の人に聞いてみること」の一点なんですよね。

当然それで得られる回答なんか、今までのものとさして変わりはないわけで…。

そんなわけで、勢い込んで前任者さんの退職事情探しをはじめたはいいものの、同じフロアの人にひと通り聞いてしまうと打つ手なし。あっさりと調査は暗礁に乗り上げてしまいました。むぅ、困った。

そんなある日のこと。

「わかりましたわっかりました~」と後輩クンが得意気な顔をしてやってきたのです。

「へ? なにが?」
「やだなぁ、前任者さんのことですよ」
そう言って、小鼻をぷくりとふくらませる後輩クン。

「ただ普通に退職したなんてとんでもない! なんか相当にたいしたタマだったみたいっすよ!?」
え? そうなの!? ってその言い回しいいね、なんか刑事ドラマみたいだ。
「辞めたんじゃなくて、辞めさせられた…が正しかったみたいなんです。後に禍根を残さないよう、懲戒処分は避けたんだけど…と言ってました」
「えええ!? なにそれ!!」
「ね、驚きでしょ~。だから急に後任を決めなきゃいけない羽目になったんですよ」

それはすごい。確かにこれはかなり驚きの情報です。
でも後輩クンは、いったいどうやってこの情報を手に入れたんだろか。

「ああ、総務のおねーさんに『シュークリームあるから食べに来る?』とお呼ばれしましてね、それで茶飲み話してたらそんな話が出てきたんですよ」

あ~そかそか、なるほど。って、え? なにそれ? シュークリーム? お呼ばれ?

「なんでオマエだけそんな楽しいものに呼んでもらえてんの?」
「ん? いやいやそんなことはどうでもいいじゃないですかアッハッハッ。そんなことよりも今は前任者さんの話ですよ」
いや、今は前任者さんよりもオマエの話の方がオレはむちゃくちゃ気になるんだけども…と続けようとするボクの声は、「で、なにをやったかというとですね」なんて興奮気味に話す彼の言葉にさえぎられてしまうのでした。


2006/12/06

シス担前任者の影
その三「暗黒時代」

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「脅してたらしいんですよ」
周囲をうかがうように眉をひそめ、そっと後輩クンがもらしたのは、そんな言葉でした。
シス担の前任者…、その退職事情を探っていたのに、出てきた言葉が「脅してた」。

なにがどうつながるのか、間が飛躍しすぎていて意味がつかめません。脅してた…って、恐喝ってこと?
というか、総務のおねーさんはたぶん書類上の手続きとかで知ったんだろうけど、そんな重要事項漏らしちゃいけないんじゃないのこれ。

「あ~、まずいですかね。でも、業務上知ったとかじゃなくて、彼女たち自身が被害者だったわけですから…」
「ええっ!?」

シス担前任者。総務のおねーさん…たち。そして恐喝。
ちょっと並んでるキーワードが尋常ではありません。なんか聞いてて怖くなってきました。背中にじんわりイヤな汗が浮かんできます。

「前任者の人が、しょっちゅう総務のおねーさん方と連れだって出かけてた…って話は知ってますか?」

いや、そんな話はちっとも知りません。そもそも聞いた限りだと前任者さんの評判は、「あまり性格の良い人間ではなかった」というもの。そこに総務のおねーさん方がつながってくるなんて想像もできない話です。

「なんかですね、シス担の権限を悪用して、彼女らのメールを盗み見てたらしいんです」
「で、中にはそれなりにプライベートな文もあったりして、『これをバラされたくなかったら…』と」

…と?

「昼飯おごれ、とか。タバコ買ってこい、とか」

…なんというか、いろんな意味で開いた口がふさがりません。

さて、この前任者さん。
あまりにもしつこく要求を繰り返したため、最後にはおねーさん方に開き直られてしまい、「やれるもんならやってみろ」と社内的に告発されるという結末を迎えます。
ただそこはやはり女性の身。あまり徹底的にやって逆恨みされると後が怖いということで、懲戒免職処分は避けた…ということなのでした。

「まったく、怖い世の中ですよね」
うん、これまたいろんな意味でね。口には出さず、ボクはただ後輩クンの言葉にうなずくのでした。


2006/12/13

シス担前任者の影
その四「マネしちゃダメよ」

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「なんでわざわざ隠してたんですか?」

なんでわざわざ前任者さんのことを伏せていたのか。その疑問を解き明かすべく、課長と先輩のもとへ勢い込んで向かったボク。そんなボクから飛び出した思いがけない問いに、あわわわと焦りを隠せない2人。

そんな2人から最初に出た言葉は、「マ、マ、マ、マネなんかしちゃダメだぞ!!」…というものでした。

正直、意味がわかりません。
なにより、質問に対する答えになってません。

「し、し、しかしなんでそれを知ってるんだ!?」
「ど、ど、ど、どうしてわかっちゃったの!?」
呆けているこちらをよそに、相変わらず2人は焦りっぱなしです。

質問に対する答えはいただけないままとはいえ、こうなりゃボクにだって薄々と事情は読めてきます。
つまり隠しておきたかった事情とは、「そんなことができてしまう」という事実そのものだったのです。

シス担になるということはいろんな権限を持つようになるわけですが、そいつでなにができるのかを知らなきゃ、権限を行使しようもありません。
よーするに、多少やばいことができちゃいますよといったって、それができることすら知らなきゃやばいことはないわけだ。

「実際、知らなかっただろ?」

先輩にそう問われて、ボクは素直にうなずきました。

「もっとも、知ったからといって、コイツはそんなこと手を出したりできるタマじゃねぇがな。ガッハッハ」

課長の言葉にも、ボクは素直にうなずきました。

それを見て安堵したのか、まぁその後は2人の口が軽いこと軽いこと。最後には「だから後任は気の弱いオマエみたいな奴にしたんだ」と2人して笑う始末ですよ。

…なんかバカにされてる気がする。

そう思っても、否定できずにうなずくボク。

謎は解明できたはずなのに、なんでボクは無力感にさいなまれているのでしょうか。
世の不条理を感じずにはいれません。



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