アスキービジネス

ABO:シスタン ~システム担当を雑用係と呼ばないで~

とある会社のシステム担当者「志須山丹悟(シスヤマタンゴ)」の日々の仕事を見ながら、世のシステム担当者を応援するブログ。

2007/02/21

バージョンアップで艱難辛苦
その一「そろそろ、なんとかしないとなぁ」

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会社のパソコンに、必ず入れておかなきゃいけないソフトの1つに、「ウイルス対策ソフト」なるものがあります。
これ、言うまでもなくコンピュータウイルスへの感染を防ぐためのもの。いや、ひょっとするとメールの送信前チェックとかで、お得意さんに迷惑をかけたりしないのが第一の目的かもしんない。
なにせ「これは必須」な奴なので、パソコンを購入した際には、必ずウチらシス担の方でウイルス対策ソフトを導入して、それから社員さんにおろすという、決められた流れがウチの会社にはあったりするのでした。

んでですね、このウイルス対策ソフトに関しては、社で一括して社員数分のライセンスを購入してあるんですが、これが先日新しいバージョンに代替わりしちゃったのですよ。そうすると、あ、こりゃいかんなと、みんなのも載せ替えてもらわなきゃ困るなと。
そういうことになっちゃったのです。

「すみませんが、そういうことですので、各自でバージョンアップをお願いします~」

そんなわけで、ボクこと志須山丹悟は、先日から、何度となくそうしたアナウンスを繰り返していたのでした。

さて、それから1カ月。
フロアのパソコンを見渡す限り、そんな作業これっぽっちも、してもらえてる気配がありません。
自分の無力さにはただ泣き濡れるばかり。

そしてさらに1カ月。
ウイルスの新種がポコポコ出てくる昨今では、もうそろそろほっとくわけにもまいりません。
わかってるんですよボク。どうせあれでしょ、これで誰かが感染したりなんかしたら、ぜーんぶ、ボクのせいになっちゃったりするんでしょ。

こうしてボクは、フロア内の全パソコンにインストールされているウイルス対策ソフトを、自らの手でバージョンアップさせてしまおうと決意したのでありました。
といっても、業務時間内だと文句を言われてさせてもらえないに違いありません。土日はちょっと行きたいとこがあるしなぁ…しょうがないなぁ「思い立ったが吉日」で今晩やっちまうかぁ。

「そんなわけですので、今晩バージョンアップ作業を行ないますー」
部署のみんなにそんなメールを送信して、やがて誰もいなくなった午後21時30分。新しいバージョンの入ったCD-ROMを握りしめ、ボクはひとりオフィスの中に立っていたのでした。


2007/02/28

バージョンアップで艱難辛苦
その二「さて、やりますか」

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自分の席のあるシマだけ電灯をつけて、他の場所はその明かりで薄暗くぼんやり照らされているだけ。
ボクのほかには誰もいない、シーンと静まりかえったオフィス。シス担になってからというもの、いつの間にやら慣れ親しんでしまった光景でした。

ブーンとうなり声をあげる、サーバのファンの音とか。
隅っこの方でカッチカッチと光る、ハブやルータのインジケータとか。

どれもこれも、日中のオフィスでは気づけない、わずかな音や光ばかりです。
そうした音や光が身近になるこの時間。
ボクは決してそれが嫌いじゃないというか、最近は少しずつ好きになりはじめてるのが可笑しくもあるのでした。

「ん? ありゃりゃ?」

どのパソコンからバージョンアップ作業をはじめようかしらと周囲を見渡したとき、課長の席がうすぼんやりと光っているのに気がつきました。見ると机上にあるノートパソコンが開きっぱなし。どうも電源を切り忘れて帰ってしまったようです。

「ああやっぱりだ」

のぞき込んでみると、画面にはウィンドウズの旗マークがフラフラと…。画面の焼き付きを防ぐスクリーンセーバーが、延々と主がいないまま働き続けています。

「こいつからやるかぁ」
ノートパソコンの右側面にある小さなボタンを押してDVDドライブのトレーを引き出し、持ってきたCD-ROMをそこにはめ込みます。トレーを本体側に押し戻すと、ギュイーンという回転音に続いて、チッチチッ…というかすかなアクセス音。

CD-ROMに納められたウイルス対策ソフトのインストーラ画面が起動して、インストールを指示するとその後「アップデートしますかー」というダイアログが表示されて、「はい」と答えたら再びギュイーンとCD-ROMが回転して…。

「あ、あっちにも消し忘れのパソコンがあるっぽいなぁ」

バージョンアップ作業を行なう一方で、ボクは相変わらずオフィスを見渡していました。「ウォーリーを探せ」さながらに、うすぼんやりと明かりがともる一角…、つまりは電気を切り忘れたパソコンが他にないかを探し、その数を数えていたのです。

え? なんのために?

もちろん、ただの暇つぶしです。


2007/03/07

バージョンアップで艱難辛苦
その三「あえてそこは見ないフリ」

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「やばいかも」
そう思いはじめたのは、午前2時を少しまわったあたりのことでした。

のんびり1台1台CD-ROMを突っ込んではバージョンアップを済ませてきたんですが、この処理に思ったよりも時間がかかる。「バージョンの確認を行なっています」…「アップデートしています」…という処理に、なんでだろうと不思議になるほど、時間がかかる。

でもまぁたいした台数じゃないだろうし、いっか…と思ってたんです。

ところがやってくうちにわかってきたのは、「ウチの部署って、誰一人としてバージョンアップしてくれてなかったんだ!?」ってことでした。電源入れて確認したら、あれもこれもそれもどれも、ウイルス対策ソフトのバージョンは見事に古いままなのです。
まさかこのフロアすべてのパソコンを、1台ずつバージョンアップさせていくとは思っていませんでしたよ。大誤算という奴ですよ。

悪くても半分くらいだろうと思っていたボク。
ちょっと確認していって、やってないのがあったらバージョンアップさせてくか…くらいに考えてたボク。
甘かった。
虫歯になるくらいに激甘だった。

目の前でヴィーンと唸るDVDドライブの音を聞きながら、ぱっと視線を上げて隣のシマを見てみると、そこにはズラズラ~と居並ぶ多数のパソコンたち。
もちろんそっちは、まだ手をつけてないシマです。つまりはそいつらを、まだこれから1台ずつチェックしていかなきゃいけません。

全部であと何台あるんだろうか。
つか、ほんとに今日中に終わるのかなこれ。

全部であと何台かなんて、数えりゃすぐにわかる話ではあります。なのですが、あえてここは数えない。現実なんて知りたくない。
とにかく目の前のを片付けていきゃ、いつかは終わるのさアハハのハ~なわけですよ。

ヴィーン…チチ…チチチッ。
ヴィーン…チチ…チチチッ。

手持ちぶさたなまま、CD-ROMの読み込み音だけ聞いてると、じんわりと背中に嫌な汗が浮かんできます。
気がつけば、時刻はすでに午前3時。
ボクの頭の中のハツカネズミさんは、「ヤバいよヤバいよ」と騒ぎつつ、ガラガラ滑車を回すのでありました。


2007/03/14

バージョンアップで艱難辛苦
その四「これで終わるとほっとして…」

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時刻はただいま午前7時。

夜を徹してのバージョンアップ作業も、残り1台となりました。目の前でヴィーンとCD-ROMを読み込んでるコイツが作業終了となれば、それですべてが完了したことになるのです。
「やった、やったぞー」
半分呆けた頭の中で、そんな風に勝利の雄叫びをあげるボク。
そろそろ誰かが出社してきてもおかしくない時間ではありますが、なんとか朝の始業時間には間に合わせることができたようです。

『ほっとしたら、なんか眠くなってきちゃったなぁ』
どうせ後はインストーラまかせだし、と思う気持ちもあって、ズンズン重くなるまぶたがどうにも支えきれません。
うつら…うつら…。ぐー…ぐー…ぐー…。
目を閉じてほんの数秒経つか経たないか、そんな間に、ボクは眠りに落ちていったのでした。

「あー!! なに人のパソコンをいじってんすか!!」
突然の大声が、気持ちのよいまどろみをぶち壊してくれました。「ななな、なに!? なに!?」とあわてて顔をあげるボク。目の前には後輩くんの姿があり、時計を見るとすでに8時をまわっています。

『あ、そういえば最後にやってたのは、確かコイツの席だった』

パソコンを見ると、インストーラはすでにその作業を終えていました。いつの間にか寝ちゃってたんだなぁ…と思いながら、インストーラの終了画面を閉じて、はいゴメンよと席を立つボク。

そしたらですね、後輩くんが、さらに追い打ちをかけてきたんです。
「勝手にいじんないでくださいよ、まったくもう!!」…と。
…ちょっと、カチンときました。

「勝手にじゃないよ。アナウンス出してただろー、ウイルス対策ソフトのバージョンアップしますって」
「そもそも、その言い方なんだよ? ボクだってたいへんだったんだぞ、一晩中なぁ~…」

堰を切ったようにグチグチと不平不満を言い立てるボク。珍しく優勢です。

…とそこへ、「あれっ?」と先輩の声。

「なに、一晩中そのバージョンアップとかいうのをしてたわけ?」
「そんなの1台1台まわるんじゃなくて、ネットワーク経由でメディアを共有させてやりゃ、あっという間に終わったんじゃねーの?」

……あ。

あんぐり口を開けたまま、ボクの時間は止まってしまいました。
後輩くんに「どいてくださいよ」と脇へ追いやられても、「早く自分の席に行けよ」と先輩に言われても、しばらくの間、ボクはそこで放心し続けることになったのです。



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