アスキービジネス

ABO:シスタン ~システム担当を雑用係と呼ばないで~

とある会社のシステム担当者「志須山丹悟(シスヤマタンゴ)」の日々の仕事を見ながら、世のシステム担当者を応援するブログ。

2007/01/24

憧れのリモート管理
その一「はじまりは一本の電話から」

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その日、ナントカという営業さんからボクのもとへ電話が入ったのは、午後4時をまわったあたりのことでした。
「とととととと、とにかく急ぎなんだよ、ととととと…」
なんで「ナントカさん」なのかというと、なんだか妙に焦った口調で、名前がよく聞き取れなかったから。用件は、外から社内のメールサーバにアクセスしたい…というものでした。

それがですね、できないんですよ。

実はボクも少し前に、「リモートで管理できるようにしたいので、社外からのアクセスを許可させてください」と課長に直訴したことがあったんです。外からリモート操作できるようになれば、ちょっとしたことで休日出勤とか泊まり込みになったりとかがきっと減らせるに違いない。少なくとも自宅で作業ができるようになる分、お風呂と布団から縁遠くなるような事態は避けられるに違いない。
そう思ってのことでした。

ところがその答えは、「個人情報保護うんぬんとか世の中がかしましいから、なんかようわからんけど怖そうなのでダメ」とかいうものでした。おまけに「オレは困っとらん」とか言い出す始末。
そりゃアナタはサーバ管理で休日出勤とかしてないもの、困るわけないもの、勘弁してだもの、と思いながらも小心者なボクはなにも言えず、ただただ口がパクパク腹話術人形のように動くだけ。嗚呼むなしくも口惜しい思い出の1ページ。

…なんてことがあったんです。

そんな風潮が大勢を占める我が社なものですから、社外からのリモートアクセスは全面禁止。一切許可されておりません。

「うっそ~、困ったな~。そう言わずになんとかなんないの~」
「すみません…」

結局その営業さんは、「だったら営業部のものにFAXしてもらうようにするよ」といって電話を切りました。どうも以前に受信したメールの中から、急ぎで取り出したい添付ファイルがあったようです。とりあえずFAXでもらってなんとかする…ということは、新しくそれを見ながらうち直すってことなんでしょうか。ご愁傷様というかなんというか、そもそもウチの会社がもっと柔軟に考えてくれればこんな苦労はなかったろうに…。

ん? ちょっと待てよ。
これはひょっとしてひょっとすると、チャンスという奴なのかもしれない。

ガチャンと受話器を置いた手はそのままに、ニヤリとほくそ笑むボクなのでした。


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以前あっさり却下された時の敗因。それは、「シス担が楽になるだけだろ」と思われてしまったことに100ガバスで間違いありません。どうも皆さん「シス担が苦労するだけで済む問題ならシス担に苦労させておけばいい。それが皆の幸せにつながる道」と思っている節がある。冗談じゃないと思うんだけど、確実にその節はある。

そして、その風潮を吹き飛ばすだけの力はボクにはない…んですよねこれがまた。

その点今回は、営業さんが仕事上困るといってアラートをあげてきたわけです。これは無視できませんよ。現場が困ってるわけですから、ほら、会社としてバックアップしてやんないといけません。ボクもシス担としてできる限りの努力はしなきゃいけません。

そこでリモートアクセスなわけですよ。

確かに一時期は情報漏洩うんぬんだセキュリティうんぬんだで、全面禁止がトレンドだった頃もありました。でもここんとこの雑誌を見る限りだと、それはすでに時代遅れであるようです。配慮するところは配慮しながらであるけれど、ネットワークが活きるところは、やはりそれを活用していこうじゃないですかと、それが今の流れなんだとか。
…となれば。

ふっふっふっふっふ。

確かそのあたりのトレンドが取り上げられていたはず…な雑誌を手にすると、怪しげな笑みを浮かべながらボクは席を立ちました。

「営業さんは、リモートアクセスが可能になると、とても便利になるのです」
「営業さんは、リモートアクセスが可能になると、とても便利になるのです」
「営業さんは、リモートアクセスが可能になると、とても便利になるのです」

ついでにシス担も、ちょこっとだけ便利になるのです。
ちょこっとね、ちょこっとだけ。

そんなことをブツブツつぶやきながら、向かう先は言うまでもなく課長の机。

「ん? どうした?」

怪訝な顔をする課長の目の前に、ボクは持参した雑誌を広げました。
「ん?」
さらに訝しがる課長。
その顔をあえて見ないようにしながら、今日あった営業さんからの電話の件を、つとめて冷静に話します。

『さぁ、リベンジの時だ』
頭の中では、「カーン」とゴングの音が鳴り響いていました。


2007/02/07

憧れのリモート管理
その三「どうだどうだと指をさす」

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ドドーン!!

ふっふっふっふっ。
そんな派手派手しい効果音が聞こえてきそうなほどに、圧倒的な勝利でした。あの課長がですよ、あっけにとられるばかりで何も言い返してこないのです。

「現在のトレンドはどうであるか」
雑誌記事を示しながら滔々と語りました。
「どう営業さんをサポートすべきか」
前向きな姿勢でもって、熱く語ってみせました。
正直なところトレンドだなんだとボクにだってよくわかっちゃいないわけでありますが、そんなことを気取られてはいけません。目指すは自宅からサーバ管理。いちいち泊まり込まなくてもすむ未来よコンニチハ…なのです。

「しかしなんでお前は、そんなにリモートうんちゃらとかいうのをしたいんだ?」
「そ、そ、それはもちろん、現場の声もありますし、必要だよな~と思うからなわけで…」「ふ~む」

考えてみれば、シス担という立場になって、こんなにも主張・提案をしてみたことは、これがはじめてだったかもしれません。いっつもなんか「やれ」と言われて振り回されてただけだもんなぁ。
そう考えると、ボクも少しは成長したということかしら。

う~んと考え込む課長。
その前で、う~んと過去に思いをはせるボク。
はたからは、2人してなにか重大な壁に突き当たってるように見えたに違いありません。

「ところで、そのリモートってのはなにがいいんだ」
「それはですから、外からですね…」
「あー、いいからちょっと耳を貸せ」
「はぁ」

『それはあれか、あー、あー、おねーちゃんのいるお店でも仕事ができちゃったりするのか?』
『は…?』
こ、このオヤジ、それでなにやる気だ!?

「えーっと、“やろうとすれば”できると思います」
やらせませんけど、という言葉はとりあえず飲み込むとします。なんだか今日のボクは、我ながらかなり策士なのです。

「ふむふむ、それは確かに便利かもしれんな」
この課長の頭には、いったい今どんな光景が広がっているんでしょうか。
『一度開いて見てみたい』
目の前でニヤニヤ笑う課長を見ながら、ボクはそう思ったのでした。


2007/02/14

憧れのリモート管理
その四「幸せってなんだっけ」

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今どきは、リモートアクセス全面禁止なんてトレンドじゃないですよ~…。おそらくはそうしたボクの言葉を受けてのことなんでしょう。

「じゃあOKにすべきもんを全部調べてこい」

1つ条件があるという前置きで、そんなことを課長は言い出したのでした。
それはつまり調べてきたらOKってこと? ともちろんボクは大喜び。ありがとうございますー!! ってなもんですよ。

やたー、うれしいー。

最後の最後まで「とはいえな、個人情報がどーとかテレビで言っとるのは、やっぱり気になるからな」とブツブツ言っていた課長。そんな課長にとって、これが譲れない最後の一線であったようです。

そんなわけで、大喜びでさっそく調べにいくかと思ったボクなのですが、そこでハタと気づいたことが。
OKにすべきもんを全部調べろということは、まずなにができるか知らないといけませんねと。
そもそも、どう使うかを考えるためには、どんな業務でどう役立つかも調べなきゃいけないのかなひょっとして。

…よくよく考えてみると、なんかこれって「むちゃくちゃたいへん」なんじゃないの?
そんな気持ちが沸々とわいてきました。

考えてみりゃ確かにそうなのです。
ちょっとやってみたいなーなんて軽い気持ちで済むようなご時世ではないわけで、んじゃキチンと勉強するなり調べるなりして、問題を未然に防ぐ覚悟が必要になってきます。
その結果、社内中にヒアリングなんてのも、必要になるかもしれません。

ん? と不思議そうな目をこちらに向ける課長。
考えれば考えるほど、額に脂汗が浮かんでくるボク。

『これ、やっぱナシってことにしてもらえますかね』
そう口を開こうとしたボクに向かって、楽しそうに課長は言いました。
「頼んだぞ、早く店にノートパソコンを持ち込んで、オレの勇姿を見せるんだからな。ガッハッハッ」

いや、それはどっちにしても不許可な方になるとは思うんですけども…。

この後一週間。ボクは課長のど忘れが発動してこの話がフェードアウトできるようになるまで、ひたすら目を合わせないようにしながら過ごすことになるのでした。



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