アスキービジネス

ABO:シスタン ~システム担当を雑用係と呼ばないで~

とある会社のシステム担当者「志須山丹悟(シスヤマタンゴ)」の日々の仕事を見ながら、世のシステム担当者を応援するブログ。

2006/10/24

なんでボクがシスタンなんですか?
その一 「ある日芽生えたギモン」

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はじまりはそんな言葉でした。
ボクの名前は志須山丹悟(シスヤマタンゴ)。しがない中小企業でシステム担当を押しつけられて、日々「勘弁してよ~」とか泣き濡れながらあくせくと働いてます。
そんなボクにですね、ある日後輩が聞いてきたんですよ。「なんでシス担になったんですか?」って。
そりゃこっちが聞きたい。
なんでボクがお前のような好き勝手ワガママ放題な社員に振り回されつつ毎日苦労する羽目になったのか、むしろボクこそが知りたい。知りたすぎるくらい知りたい。
そんな風に思うわけでありますよ。

そもそもボクがシス担になったのって、ある日課長が「今日からお前がシス担な」とかいきなり宣言してきたからなんだよなぁ。

そんなことをボケーっと考えてたら、「なんだ、知らないんですか?」と後輩くん。

なんですかその「あ~この人なんにも知らされないままやらされちゃってるんだ、任命された理由なんかなんにもなかったかもしんないんだ、技術があるからとかそんなことではないんだきっと、あ~かわいそうなこと聞いちゃったのかもしんない」的な冷たくも生あたたかい目は。

そりゃ確かに技術なんかないですよ?
そりゃ確かにワタクシ、パソコンのパの字も知りませんでしたとも。
でもね、シス担になって以降はいっぱい勉強してきたんですわ。いっぱい本読んで、いっぱいやらかして、いっぱい泊まり込みも経験しながらひとつずつ覚えてきたんです。
いっぱい雑誌を自腹で買って、知識が増えるほどにフトコロは寒く寒くなりつつも、ワタクシがんばってきたでございます。

って、そーいや課長は「ウチの部署のエリートだから、キミにこの重要な任務を任すのだ」とか言ってたっけかなと思い出した。

いいかね後輩よ。ボクがこの部署のエリートだからこそ、ボクにこの重大なシス担という任務がのっかってきたのだよ。
ちょっと鼻をフフンと鳴らしながら、そんなことを言ってみた。だってウソじゃないもんね。確かにあの時、課長はボクにそう言ってきたんだもの。

「え~………、ホントですかぁ~……?」

なんですかその限りなく疑わしくも「かわいそうな人なんだ」的に生あたたかい目は。

いいでしょう。いいでしょうとも。
そうまで言うのなら課長に直接確認してやろうじゃないですか。

そうしてボクは後輩をその場に残し、課長のもとへと向かったのでした。


2006/11/01

なんでボクがシスタンなんですか?
その二「ねぇ課長?」

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「なんでボクにシス担という白羽の矢が立ったんでしょうか」
後輩とのたわいもない会話から、ふとそんな疑問が芽生えたボク。確かエリートだから…って話だったはずなんだけどと思うものの、後輩はそれを信じません。

ならば…ということで、直接課長に聞くことにしたのでした。

ところがですね。

「アレだよアレ」
…と、すかさず答えてくれるように見えた課長なんですが、いきなりなにかハッと気づいたような表情になって、もごもごと口ごもりはじめました。視線も右へ左へとふらふら泳いでいます。

あら?

ここは「それはキミが我が部署のエリートだからだよ、任命した時にも言っただろ?」と答えるとこじゃないのですか?
しかしボクの目の前で右往左往する課長は、焦点のあわない目を右へ左へ動かしながら、なんとか逃げ場を探しているように思えます。

なんで?
いったいボクって、どんな理由でシス担に選ばれたわけ?

本心では「今さらどうでもいいや」という話だったはずなのですが、こうなると否が応にも気になります。うすらヤブヘビ的キナ臭さは感じますが、今さら後にはひけません。ええ、もうひけませんとも。

…と、その時。

「あ、先輩お疲れ様です~」
背後から、話の発端である後輩の声が聞こえてきました。
「おう、お疲れ~」
続いてもう1人別の声。どうやら1コ上の先輩が、外回りを終えて戻ってきたようです。
そうそう、パソコンのこととかいうなら、あの先輩の方が当時のボクよりよほど詳しかったはずなんですよね。
なんで彼じゃなくてボクだったんだろ…?

「そういえば先輩、志須山さんがシス担になった理由ってご存じですか~?」
「ん?ああ、アレだろ…志須山の…ブツブツ」

え…?
なんだか今、信じられない言葉を耳にしたような。

「どゆこと?」

思わず敬語も忘れて、課長にそう問いかけてしまうボクなのでありました。


2006/11/08

なんでボクがシスタンなんですか?
その三「名は体を表す」

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時をさかのぼること1年前。
その日課長は、夕方近くなると件の先輩を会議室に招集し、2人であれやこれやと延々話し込んでおりました。

「どうすっかなぁ」
「どうしましょうねぇ」

2人とも「めんどくせぇなぁ」という顔で、じっと腕組みをしています。

先月末に、今まで社内のシステム担当をしていた者が、急な理由により退職することになりました。といってもその人物は別部署の者なので、それ自体は特になんということもありません。
問題はその後のこと。空白になった「システム担当」のポストです。

「部署持ち回りだからなぁ」
「ウチがやる番なんですよねぇ」

そう、この会社では毎度毎度システム担当を、各部署の持ち回りで決めていたのです。といっても特に定期的に変えるというわけではなく、「変える必要がある」となった時に、「じゃあ次は違う部署から出しましょうね」とするアバウトなもの。あんまりアバウトだし前任者が長期政権だったもんですっかり忘れていましたが、そんなお約束の流れがあったのです。

で、その順番が今回まわってきちゃいましたよ…と。

誰が適任なのかねぇと考えてみた課長ではありますが、そもそも「どんな能力を持ってる人が適任なんでございますか?」というところからしてわかりません。パソコンに詳しいやつがいいのか? でもどうせ難しそうなとこは業者に丸投げだろ? そもそも詳しい奴なんてウチの課にいたか?
相談を受けた先輩だって、その点は課長と大差なしです。パソコンに詳しいといえば、ウチの課だと自身に当てはまりそうな気もしますが、「システム担当」を引き受ける気なんかさらさらありません。余計な仕事は抱えたくないのココロなのです。そもそも、ちょっとワープロが器用に使える程度だし。

「う~…ん」
なんだかよくわからんし、とにかくめんどくさいなぁこれはなぁ。
そんな受難の相を浮かべながら、2人はただただうなり続けるのみなのでした。

「あ」
ふいに、先輩の側が短く声をあげました。
「課長、課長、これこれ」
手に持った名簿をうれしそうに振りながら、彼はその中の一点を指さします。
その先には、「志須山丹悟」という名前。
「シ・ス・ヤ・マ…タンゴ!?」
2人で同時に読み上げて、そして同時に笑いました。
「決まりだな決まり、まさに名は体を表すのとおりだな」
こうしてシスヤマタンゴ…略してシスタンは、めでたくシス担候補に決定したのでした。


2006/11/15

なんでボクがシスタンなんですか?
その四「叫び」

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「うは、ほんとですかそれ~」と後輩くん。
「ほんとだよ、だってオレと課長とで決めたんだもん」と先輩の声。

そして聞けば聞くほど心の中がブラックに染まりゆくボク。

『名前が志須山丹悟だからシス担に決定ね…って、あまりにそれはヒネリなさすぎだろ!?』

そう心のうちで叫ぶボクの面前では、「ガハハハハ、いや実はそうなんだよガハハハハ」と、課長がバツの悪そうな薄ら笑いを浮かべています。
もうあらためて確認するまでもありません。
その表情こそが、先輩の言っていることに間違いないと雄弁に語っているからです。

くらっと遠のく意識の中で、シス担になってからの1年あまりが走馬燈のように駆けめぐりました。

ああ、サーバが再起動にしくじったよと呼び出されたあの大雪の日。
ああ、勉強のためにと雑誌の定期購読をお願いしたらふざけんなと却下されたあの雨の日。
そういや、夜中に床下のケーブルと格闘するなんてことも、一度や二度ではなかったよなぁ。
自腹切って勉強して、なんとか皆に迷惑をかけないようにとがんばってきたよなぁ。

結果この1年で、財布はとことんお寒くなったけどさぁ。

「あ、あ、あれ!? シ、志須山そこにいたんだ!?」

頭の中で「北の国から」のテーマソングが流れはじめ、すっかり幽体離脱気味になっていたボクの意識に、とつぜん先輩の声が割り込んできました。
振り返ってみると、やや青ざめた顔で先輩がこちらを見ています。そしてその横には、必死で笑いをこらえているらしき後輩の顔。

……プチン。

「いたんだじゃないですよ!! ホント勘弁してくださいよ!!」

考えてみれば、シス担になってから何度ボクは「勘弁してくださいよ!!」と叫んだかわかりません。
でも、これほどまでに大きな声で叫んだのは、後にも先にもこの時だけだと思います。



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