2007/06/06
5月にハートブレイク
その四「傷心の朝」

「はっはっはっ、なんだい伊代。少し寝かせてくれよ、いいじゃないか眠いんだよ、ん? なに? ソファーじゃ風邪をひくから? はっはっはっ大丈夫だよ心配性だなぁ」
「伊代って誰ですか? いいから早く起きてくださいよ、そこボクの席なんですから」
これ以上ないほどの冷たさを持った後ハイくんの声に、ボクはパチンと目を覚ましました。周囲を見ると、懐かしい20年前の職場風景が広がっています。
『あれ? 20年前だ。夢でも見てんのかな?』
ボーっと考えるボクの脇では、後ハイくんがティッシュでゴシゴシと机の上を拭いています。
「あーもう、また徹夜でなにかしてたんですか? 徹夜するのはいいんですけどね、毎度毎度ボクの机で寝るのやめてもらえません? ほらー、ここもヨダレだらけ。毎回ヨダレがすごいんですよ、ほんとお願いしますよ」
そう言いながらゴシゴシゴシ。
「あれ? 河湯 伊代さん…は?」
つい口を出たその名前に、後ハイくんは眉をひそめました。「誰ですか、それ?」…と。
えっと、あの、んっと。
…………。
夢オチですか!!!???
うそー、そんなんありか? うそだー!!!
でも確かにヴェルタース○リジナルが出てきたあたりから、なんかおかしいよなぁとは思いました。思いましたけど、思いましたけどー。
そう困惑するボクの脇で、やっぱり後ハイくんはゴシゴシゴシ。いいからさっさとどけよなんて、時折冷徹な目をキッと向けるのも忘れません。
ほんの数分前までは部長のはずだったのに、それが今じゃ、後ハイくんに目で威圧される始末…。
『ああ、いっそもう一度夢の住人になりたい!!』
そう思って二度寝しようと突っ伏したボクの試みは、ちょうど出社してきた課長のガハハ笑いと、後ハイくんの椅子けっ飛ばし攻撃の前にあえなく撃沈されてしまいます。
こうしてまたいつもの日常がはじまって、ボクはなんだか知らないけど傷心気分で、ただただ呆けるばかりなのでした。
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読者 |2007/06/06