2007/02/28
バージョンアップで艱難辛苦
その二「さて、やりますか」

自分の席のあるシマだけ電灯をつけて、他の場所はその明かりで薄暗くぼんやり照らされているだけ。
ボクのほかには誰もいない、シーンと静まりかえったオフィス。シス担になってからというもの、いつの間にやら慣れ親しんでしまった光景でした。
ブーンとうなり声をあげる、サーバのファンの音とか。
隅っこの方でカッチカッチと光る、ハブやルータのインジケータとか。
どれもこれも、日中のオフィスでは気づけない、わずかな音や光ばかりです。
そうした音や光が身近になるこの時間。
ボクは決してそれが嫌いじゃないというか、最近は少しずつ好きになりはじめてるのが可笑しくもあるのでした。
「ん? ありゃりゃ?」
どのパソコンからバージョンアップ作業をはじめようかしらと周囲を見渡したとき、課長の席がうすぼんやりと光っているのに気がつきました。見ると机上にあるノートパソコンが開きっぱなし。どうも電源を切り忘れて帰ってしまったようです。
「ああやっぱりだ」
のぞき込んでみると、画面にはウィンドウズの旗マークがフラフラと…。画面の焼き付きを防ぐスクリーンセーバーが、延々と主がいないまま働き続けています。
「こいつからやるかぁ」
ノートパソコンの右側面にある小さなボタンを押してDVDドライブのトレーを引き出し、持ってきたCD-ROMをそこにはめ込みます。トレーを本体側に押し戻すと、ギュイーンという回転音に続いて、チッチチッ…というかすかなアクセス音。
CD-ROMに納められたウイルス対策ソフトのインストーラ画面が起動して、インストールを指示するとその後「アップデートしますかー」というダイアログが表示されて、「はい」と答えたら再びギュイーンとCD-ROMが回転して…。
「あ、あっちにも消し忘れのパソコンがあるっぽいなぁ」
バージョンアップ作業を行なう一方で、ボクは相変わらずオフィスを見渡していました。「ウォーリーを探せ」さながらに、うすぼんやりと明かりがともる一角…、つまりは電気を切り忘れたパソコンが他にないかを探し、その数を数えていたのです。
え? なんのために?
もちろん、ただの暇つぶしです。
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