2006/12/06
シス担前任者の影
その三「暗黒時代」

「脅してたらしいんですよ」
周囲をうかがうように眉をひそめ、そっと後輩クンがもらしたのは、そんな言葉でした。
シス担の前任者…、その退職事情を探っていたのに、出てきた言葉が「脅してた」。
なにがどうつながるのか、間が飛躍しすぎていて意味がつかめません。脅してた…って、恐喝ってこと?
というか、総務のおねーさんはたぶん書類上の手続きとかで知ったんだろうけど、そんな重要事項漏らしちゃいけないんじゃないのこれ。
「あ~、まずいですかね。でも、業務上知ったとかじゃなくて、彼女たち自身が被害者だったわけですから…」
「ええっ!?」
シス担前任者。総務のおねーさん…たち。そして恐喝。
ちょっと並んでるキーワードが尋常ではありません。なんか聞いてて怖くなってきました。背中にじんわりイヤな汗が浮かんできます。
「前任者の人が、しょっちゅう総務のおねーさん方と連れだって出かけてた…って話は知ってますか?」
いや、そんな話はちっとも知りません。そもそも聞いた限りだと前任者さんの評判は、「あまり性格の良い人間ではなかった」というもの。そこに総務のおねーさん方がつながってくるなんて想像もできない話です。
「なんかですね、シス担の権限を悪用して、彼女らのメールを盗み見てたらしいんです」
「で、中にはそれなりにプライベートな文もあったりして、『これをバラされたくなかったら…』と」
…と?
「昼飯おごれ、とか。タバコ買ってこい、とか」
…なんというか、いろんな意味で開いた口がふさがりません。
さて、この前任者さん。
あまりにもしつこく要求を繰り返したため、最後にはおねーさん方に開き直られてしまい、「やれるもんならやってみろ」と社内的に告発されるという結末を迎えます。
ただそこはやはり女性の身。あまり徹底的にやって逆恨みされると後が怖いということで、懲戒免職処分は避けた…ということなのでした。
「まったく、怖い世の中ですよね」
うん、これまたいろんな意味でね。口には出さず、ボクはただ後輩クンの言葉にうなずくのでした。
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