アスキービジネス

ABO:シスタン ~システム担当を雑用係と呼ばないで~

とある会社のシステム担当者「志須山丹悟(シスヤマタンゴ)」の日々の仕事を見ながら、世のシステム担当者を応援するブログ。

2007/04/18

止まっちゃったシステム
その一「課長の予行練習」

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は~るがき~た~、は~るがき~た~、ど~こ~に~~きた~。
と思わず口ずさみたくなるほど、頭の中がお花畑になってるお人が、さっきから後ろの方でカシュカシュと。春ですねぇ。

ついついそうした悪態をつきたくもなるけど、事なかれ主義のボクなので言葉にはしない。そんな小心者なボクの名前は志須山丹悟(シスヤマタンゴ)。しがない中小企業でシステム担当を押しつけられて、「またなんかトラブルですか~」とかうなだれながら、本分の仕事と兼業の、2足のわらじ状態で毎日働いてます。
お願いですから専業にしてよと思う今日この頃なのであります。

…と、話がずれました、そうそうお花畑なお人ですよ。

「ガッハッハッハッ、聞いたか志須山このシャッター音。いい音だろうガッハッハッハッ」
「こいつはな、無限連写なんだぞ、わかるか? 無限に連写できるんだぞというこった。しかも秒間5枚の高速連写だ、すごいだろ、ガッハッハッ」
「高かったんだぞうこれは。なんせ1000万画素って奴だからな。1000万画素なのに高速連写だ。メモリカードなんか4ギガだぞ、ギガだ、わかるか? それがもうあっという間に満杯になるんだ。なんせ1000万画素なのに高速連写だからな。だからよけいにすごいんだぞこいつはな、ガッハッハッハッ」

声の主は、言うまでもなく我が課長。
憧れだった一眼レフカメラを手に入れたとあって、ただいま頭の中で桜が満開に花開いてる真っ最中の、おめでたい春男なのでございます。ここんとこ1週間くらい、ずっともうこんな感じ。

「まぁそうは言ってもホントのとこな、失敗でもした日にゃ怖いことになっちゃうんだよ。だからな、しっかり練習しとかんとな」

そう、課長が手にしてるのはセミプロ仕様のすっごいカメラ。普通であれば、鬼のように怖いという噂の奥さんにダメ出しされて、こんなのが買える人ではないはずなのです。
ところが今は春。「お子さんの発表会」がいろいろとあるらしい。それがまた、すばらしくいい口実になるわけだ。

そんなわけで「子供のため」という大義名分を手に入れて、念願のカメラを手にした課長。もううれしくてしょうがないのか、「いや失敗しちゃいかんからなぁ」なんて言いつつも、ニヤニヤと締まりのない口元でもって、あちこち連写してまわっているのでした。

カシュカシュカシュカシュカシュカシュ…。

「確かにシャッター音はかっこいいなぁ。でも、今って確実に業務時間中なんですけど…」
遠くに見える課長の背中に、ボクは静かにそう語りかけたのでした。


2007/04/25

止まっちゃったシステム
その二「異変はある朝突然に」

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「書けないよ」

ある朝のこと、出社したボクのもとに、そんな苦情がいきなりどさっと出てくるようになりました。書けないよといっても、ボールペンのインクが切れたとか、そんなかわいいもんじゃありません。

「ファイルが保存できない」
「メールが受信できない」
「なんかソフトが固まって動かない」
「いいからとにかく助けてくれ」

そんな苦情がどさどさと出てきたのです。個別に症状を見てまわると、どれもこれも「サーバの共有ディスク上に書き込めない」ことに起因するトラブルで、それでつまりは「書けないよ」と。
でも、なんでそんなことになってるんだか、兼任シス担マンなボクにはとんと検討もつきません。

『なんでいきなりこんなことに…?』

どーしようどーしようと焦るボク。
しかし、このトラブルときたら、そんなまごつく暇すら与えてはくれません。

午後に入ると、今度はネットワークが死にはじめました。
相変わらず理由なんかわかりません。とにかく、オフィス内のあちこちで、ネットワークにつながらないマシンが頻発してきたのです。

大事な資料が開けない。
印刷ができない。
メールもNG。
ネットで調べ物もできやしない。

こりゃまずい。

「これじゃあ仕事になんないっすね~、アハハ~。んじゃ、今日はもう早退しよっかな~」
…なんてのん気なセリフをはく後ハイくんに少々殺意を抱きながら、ボクは引き出しの中をひっかき回していました。
サーバメンテナンスを依頼している、業者さんの名刺を探していたのです。

「こんなん、ボクの手に負える状態じゃないもの。早く来てもらわないと」

と、その時。
「志須山~、外線2番に電話~」
『ん? ナンダナンダこの忙しい時に』
内心では勘弁してよと思いつつ、とりあえず取り次いでくれた同僚にペコリと頭を下げて、その電話に出てみると…。

「あ、どもー。なんかサーバがトラブってるみたいですねー。今すぐそちらに向かいますのでー」
電話の主は、まさに今捜索中であった名刺の持ち主でした。
「うわ、助かりますー」
なんでわかったんだろ、と不思議に思うよりもなによりも、とにかくボクはほっとして、電話口に頭を下げ続けたのでした。


2007/05/02

止まっちゃったシステム
その三「果たしてその原因は」

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「いったいどうしちゃったんでしょうねー」
駆けつけてくれたサーバメンテ業者さんは、そんなことを言いながら頭を掻き掻きして、サーバマシンの前に陣取りました。

「そうですよね。ほんと突然で意味不明といいますか、なにが起きたんだかいったいぜんたい」
業者さんの後ろで、そういってため息をつくボク。助けが来たと思ったら、なんか全身の力が抜けちゃって、疲労感がどっと出たのです。

「いや、なにが起きたかは薄々わかってるんですよ。ただ、なんでいきなりそんなことになっちゃったのかなぁ…とね」
「は?」

そんな会話をしながらも、業者さんの手は止まることなく、テキパキとキーボードを叩いています。画面にはずらずらと意味不明なコマンドが並び、ずらずらとわけのわからん英文字がだららら~と流れていきます。

『さすが本職は違うなぁ』
でも、「薄々わかってる」というのはなんなんでしょうか。そもそもなんでトラブってるのもわかったんですかと。

「ああ、保守のためにですね、異常があったらメールが飛んでくるようになってるんですよ」
「え、じゃあ、コイツ自身がヘルプミーって声をあげてたんですか!?」

そう言い終えるかどうかというタイミングで、くるりと業者さんがこちらを振り返りました。
「このアカウントの人が原因っぽいですね」

なんのことはない、サーバトラブルの原因はマシンのディスクに空きがなくなってしまったことだというのです。
ディスクに空きがなけりゃあ、当然書き込むことはできません。なにも書き込めないとなれば、アプリケーションが動作するために必要な一時領域も取れやしない。必然的に動作不良を引き起こす…となるそうな。
そして、ここまでは異常を通知するメール内容から、予想できていたことだというのです。

問題は、「なんでいきなり空きがなくなっちゃったのか」ってこと。業者さんいわく、先週末時点では十分な空きがあったはずらしいのですが…。

「その理由がこの人だ…と?」
「ええ、間違いないでしょうね。この人のフォルダだけで100ギガ以上もくってますし、その日付もここ数日のことのようですし…」

心当たりありますか? とでもいうような業者さんの視線。
もちろんアリアリですとボクは目に力を込めながら、黙ってうなずくのでありました。


2007/05/09

止まっちゃったシステム
その四「そしてあの音は消えた」

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「なんかですね、サーバのハードディスクがいっぱいになっちゃってたらしいです」
「ほうそうか。で、それは直るのか?」
まったく、グダグダしてないで早く片付けろよ…とでもいうように、課長はめんどくさそうに言いました。こちらに向き直る気すらないようです。

まるで自分は関係ないとでもいうように。

「もちろん、すぐに直してもらいます」
「おぅ、早くしろよ」
「はい、なので早くお願いします」
「は?」

いぶかしげな顔をして、チラリとこちらを見る課長。

「ですから、ハードディスクの容量がいっぱいなので、不要なファイルを削除して、空きを作らなきゃいけないんです」
「おぅ、じゃあそうしろよ」

まだ、この人ってば気づいちゃくれません。

「はい、ですからあの課長? いっぱいいっぱいハードディスク使ってますよね?」
「あ? 知らんぞわしは。なんでわしがサーバとかいうのを使ってることになっとるんだ」
「えと、あの、なんかデジカメの写真データとかをかなり大量に保存してたりしてないですか?」
「あ? んなもん、いつも使ってる書類用のフォルダに入れとるだけで、サーバなんかわしゃ知らん」

なんでこの人はこれでも気づいてくれないんでしょうか。
「だからそれが、サーバ上にあるフォルダなんですよ!!」
「………、へ?」

1分ほど沈黙が訪れました。

課長の顔が、見る見る青ざめていくのがわかります。
今の今まで、こちらをしっかと見据えていたはずの視線が、どこを見るでもなくふらふらとさまよいはじめています。

「そ…、そーなの?」
課長の問いかけにコクリとうなずくボク。
「じゃあ、今日の騒ぎっつーのは、全部ワシのせいなの?」
課長の問いかけにコクリとうなずくボク。
「あー、えっとあの…。ぜ、全部消してくれていいから。練習で撮った奴をとりあえず置いといただけだから、うん」
課長の提案にコクリとうなずくボク。

この日を境として、カシュカシュカシュカシュカシュカシュ…というシャッター音を、会社で耳にすることはなくなりました。
果たして発表会は無事に乗り切ることができたのか。それは神のみぞ知る…なのです。



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