ABO:会計士平林亮子の経営カウンセリングルーム

公認会計士の平林亮子が、企業経営に関するさまざまな話題を会計の視点から語ります。

2007/06/11

損益計算書の読み方
繰延税金資産と業績(前編)

 前回のエントリで少し触れた通り、2007年3月のJALの最終業績が当期純損益になった大きな原因は「繰延税金資産」の取崩しにあるとされています。この繰延税金資産を一言で説明すると、「将来、税金(法人税など)が還付される額」という意味になります。

 ご存じのとおり、会社は利益に応じて一定額の法人税を支払う必要があります。ただしこの法人税の額は、損益計算書で計算された税引前当期純利益に直接税率を乗じて計算されるのではなく、利益に「調整」を加えた課税所得に対し税率を乗じて計算されることになっています。これにより会社は損益計算書の利益以上の税金を納付しなければならない場合もあれば、逆にあまり納付しなくてもいいこともあるのです。「払いすぎ=(税金の)前払い」「払わない=前払いしていた税金の返金」と考え、払い過ぎの年には法人税等調整額を差し引き、払わない年には逆に法人税等調整額を加えることで、そのズレを調整することになっているのです。

 また、こうした「調整」がなぜ必要になるのかは、企業会計(損益計算書)と税法の目的の違いにあります。損益計算書の費用は会社の実態にあわせて計算しますが、税金を計算する場合には、課税に「不公平がない」ようにすることがもっとも重要です。そこで、その項目を費用にできるかにズレが生じるのです。
 たとえば、会計上は得意先の経営状態が悪化した時点で「貸し倒れ」として費用とします。しかし税務上は得意先が破産宣告を受けるといった厳密な破産状態にならない限り、それを貸し倒れとして認めません。逆に、将来税務上の要件を満たしたとき、以下の図のように課税所得の計算に反映されるのです。

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 この図のケースを単純に考えると、いずれの年も利益60の45%である27の税金を支払えばいいはずですが、実際の法人税の納付額は年によって異なります。ただ、その原因は税務上(法人税法)の要件によるものであり、単なる時期のズレでしかありません。
 そこで以下の図のように、最初の年は税金の払いすぎ(つまり前払い)となり、払いすぎが認められた年は前払いしてあった分だけ減額されます。こうしたズレの部分を損益計算書の「法人税等調整額」で調整し、税金の前払分を「繰延税金資産」として貸借対照表にプールしておくことになっているのです。

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 次回は、実際に2007年3月期のJALの損益計算書を見ながら、繰延税金資産の動きについて見ていきましょう。

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