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ABO:会計士平林亮子の経営カウンセリングルーム

公認会計士の平林亮子が、企業経営に関するさまざまな話題を会計の視点から語ります。

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2007/06/26

企業が倒産するとは
企業の抱える究極のリスク

 介護保険料不正請求問題、牛肉偽装問題、スパ施設爆発事件など、企業の不祥事が後を絶ちません。企業経営は、こうした不祥事や不正が生じるリスクをはらんでいます。

 多くの場合、こうした不正は企業の決算にも大きな影響を与えます。最近の例でいうと、お菓子メーカーの不二家は、商品の廃棄による損失や店舗に対する補償金などの支払に追われ、実際に2007年3月の決算では大幅な赤字を計上する結果となりました。
 さらに上記のような不正は、企業が抱える究極のリスクである「倒産」の引き金となる可能性もはらんでいます。実際過去には、こうした不正により倒産した企業もあります。

 ところで、企業が「倒産」するというのはどういう状況であるか知っていますか? 実は、「倒産」は法律上で定義されている用語ではありません。「倒産」とは、企業が経済破綻を起こした状態、つまり企業が支払不能に陥ってどうにも立ち行かなくなった状態を意味しています。さらに付け加えれば、さまざまな代金や借金について支払う資金がなく、借りることもできずにどうしようもなくなった状態を意味しています。
 もしくは、以下のような具体的な企業整理の手続きをもって「倒産」と表現することもあります。

(1)法的整理手続

  1. 破産
  2. 特別精算
  3. 会社更生
  4. 民事再生

(2)その他

  1. 不渡りの発生による銀行取引停止
  2. 任意整理

 企業が存続するケースもあれば、そうでない場合もありますから、「倒産」という言葉が非常に広い意味を持っていることには注意が必要です。企業とは、常に倒産のリスクを持った存在なのです。

 次回は、具体的な決算書から見えてくる倒産の兆候についてみていきましょう。


2007/06/18

損益計算書の読み方
繰延税金資産と業績(後編)

 前回から引き続き、繰延税金資産について、今回は損益計算書を見ながら解説します。税金の前払いとしてプールされる繰延税金資産には、気をつけなければならない重要なポイントがあります。それは、繰延税金資産とは「将来支払う税金が減額される」という意味で、前払いした税金が無条件で減額されるものではないということ。たとえば、前回見た図を例に考えてみましょう。

hira20070618-1.jpg

 繰延税金資産は、減額する基になる法人税があって、はじめて減額効果があるものです。そのため、将来の利益を見込めないことが当初からわかっている場合は、繰延税金資産をプールできないことになっています。
 繰延税金資産がプールできる状況かどうかを、「繰延税金資産の回収可能性」と表現しますが、これは将来の業績が十分に見込めるかどうかで判断されます。
 この点、JALは将来の業績について十分な利益が見込めると主張したのに対し、監査法人はそれを認めませんでした。そのため、これまでプールしてきた繰延税金資産の回収可能性も認められなくなり、それを取り崩した額が「法人税等調整額」として損益計算書に反映された結果、以下のような当期純損失を招いたというわけなのです。

【JAL2007年3月期の損益計算書】
項目金額説明
売上2兆3019億1500万 
 
 
税引前当期純利益520億5500万 
法人税、住民税および事業税99億5300万税法に基づいて計算された納付すべき税額
法人税等調整額544億2400万過去に前払いとしたが、将来の減額効果が認められず修正する=繰延税金資産の取り崩し分。税額99億5300万にプラス
少数株主利益39億4500万外部の株主の取り分として利益からマイナス(少数株主利益の説明は別の機会にします)
当期純利益△162億6700万=税引前当期純利益520億5500万-理論的な税額(99億5300万+544億2400万)-少数株主利益39億4500万


2007/06/11

損益計算書の読み方
繰延税金資産と業績(前編)

 前回のエントリで少し触れた通り、2007年3月のJALの最終業績が当期純損益になった大きな原因は「繰延税金資産」の取崩しにあるとされています。この繰延税金資産を一言で説明すると、「将来、税金(法人税など)が還付される額」という意味になります。

 ご存じのとおり、会社は利益に応じて一定額の法人税を支払う必要があります。ただしこの法人税の額は、損益計算書で計算された税引前当期純利益に直接税率を乗じて計算されるのではなく、利益に「調整」を加えた課税所得に対し税率を乗じて計算されることになっています。これにより会社は損益計算書の利益以上の税金を納付しなければならない場合もあれば、逆にあまり納付しなくてもいいこともあるのです。「払いすぎ=(税金の)前払い」「払わない=前払いしていた税金の返金」と考え、払い過ぎの年には法人税等調整額を差し引き、払わない年には逆に法人税等調整額を加えることで、そのズレを調整することになっているのです。

 また、こうした「調整」がなぜ必要になるのかは、企業会計(損益計算書)と税法の目的の違いにあります。損益計算書の費用は会社の実態にあわせて計算しますが、税金を計算する場合には、課税に「不公平がない」ようにすることがもっとも重要です。そこで、その項目を費用にできるかにズレが生じるのです。
 たとえば、会計上は得意先の経営状態が悪化した時点で「貸し倒れ」として費用とします。しかし税務上は得意先が破産宣告を受けるといった厳密な破産状態にならない限り、それを貸し倒れとして認めません。逆に、将来税務上の要件を満たしたとき、以下の図のように課税所得の計算に反映されるのです。

hira20070611-1.jpg

 この図のケースを単純に考えると、いずれの年も利益60の45%である27の税金を支払えばいいはずですが、実際の法人税の納付額は年によって異なります。ただ、その原因は税務上(法人税法)の要件によるものであり、単なる時期のズレでしかありません。
 そこで以下の図のように、最初の年は税金の払いすぎ(つまり前払い)となり、払いすぎが認められた年は前払いしてあった分だけ減額されます。こうしたズレの部分を損益計算書の「法人税等調整額」で調整し、税金の前払分を「繰延税金資産」として貸借対照表にプールしておくことになっているのです。

hira20070611-2.jpg

 次回は、実際に2007年3月期のJALの損益計算書を見ながら、繰延税金資産の動きについて見ていきましょう。



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