2007/03/19
粉飾決算から見えてくるキーワード
「連結」と「連結外し」
前回は、粉飾決算に関連するキーワードとして「発生主義」について説明しました。今回は、もう1つのキーワードとして、会計における「連結」について説明します。
粉飾決算のために、子会社を利用する場合もあります。ある会社Aが、他の会社Bを支配しているとき、Aを親会社、Bを子会社といいます。「支配している」というのは、まずは議決権、つまり株式を一定数以上所有している状態を意味します。AがBの株の50%超を保有しているとき、Aは親会社、Bは子会社となります。また、50%超でなくても、AからBに取締役を送り込んでいるなど、意思決定をコントロールできるような状態にあれば、Aは親会社、Bは子会社となります。
そして、このような支配関係が認められる場合、AはA独自の業績を公表するのはもちろんのこと、それと同時に子会社まで含めた連結集団の業績を財務諸表によって公表しなければならないことになっています。
この、連結集団の業績を表す財務諸表を「連結財務諸表」といいます。
■子会社との不透明な取引を防止する「連結財務諸表」
この連結財務諸表が導入された1つの理由は、子会社を利用した粉飾決算を防止するためでした。たとえば、親会社から子会社に、押し込み販売をした場合などを考えて見ましょう。この場合、親会社にとっては利益となりますが、それが子会社の在庫として残っていれば、本当に売り上げたといえるか疑問が残ります。もちろん、これだけで親会社の粉飾決算であると判断できるかは難しいのですが、利益の水増しと考えることもできなくはありません。
そこで、連結財務諸表の登場です。連結財務諸表では、親会社から子会社に商品を売り上げただけでは売上や利益とはならず、連結集団の外部に販売した場合に限り売上や利益となります。そのため、親会社が子会社に押し込み販売し、多額の売上や利益を公表したとしても、連結財務諸表ではその業績が現れず、押し込み販売であることが判明するというわけです。
結果として、押し込み販売や、親会社の損失を子会社につけかえるなどの取引を防止できるわけです。
■連結外しと制度のいたちごっこ
しかし、押し込み販売や損失のつけかえをすれば、親会社独自の業績はよくなりますし、大きな連結集団を形成している会社の場合、連結財務諸表を見ても子会社との不透明な取引を必ずしも見抜けるとは限りません。そのため、連結財務諸表がそのような取引を完全に防止できるわけではありません。
また、連結の対象となるのは、あくまでも条件に当てはまる子会社になります。そのため、保有する株式数を意図的に減らして連結の対象から除外するなどの「連結外し」によって、実際には支配している会社であるにも関わらず、連結外部の会社として取り扱うなどといった手法もあります(実際に株を保有していなくても、支配できる場合もあります)。
連結外しについては、問題が浮上するたびに連結の対象となる範囲の見直しが行なわれてきました。ちなみに、以前は保有株式数だけで子会社であるかどうかを判断していたのに対し、現在では複数の要素から「支配しているかどうか」を判断するという概念が導入されています。さらには、ライブドア事件を受けて、これまで連結の対象とならなかった投資事業組合が連結の対象になったりと、時流にあった内容へと変化を続けています。
■本質的な問題点を掘り下げる視点を持つ
架空売上も子会社を利用した粉飾決算も、古くからある古典的手法です。しかし具体的な内容を見ると、その時代の会計の特徴を利用した新しいものであったりします。さらに昨今の粉飾決算からは、今回取り上げたもの以外に、「時価会計」「純資産」などの新しいキーワードも見えてきます。
もちろん、いつの時代でも、どんな手法でも、粉飾決算は許されるものではありません。しかし、粉飾決算を1つのきっかけとして会計という世界を垣間見ると、その特徴がよく把握できます。
そう考えると、粉飾決算事件について責任問題云々ばかりに注目するのではなく、そこから会計の問題点、ひいては経営の問題点といった本質的な部分を掘り下げていく視点が重要だと感じます。
2007/03/05
粉飾決算から見えてくるキーワード
「発生主義」とは?
昨年1月のライブドア事件もまだ記憶に新しいところですが、年末から今年にかけても、日興コーディアルグループなどで粉飾決算の問題が生じています。粉飾決算は偽りの数値の公表ですから、絶対に許されるものではありません。また、いずれはそれが偽りであると分かってしまうものですから、長い目で見れば何のメリットもないのです。
実際、粉飾決算が発覚した後の各社の状況を見れば、一目瞭然です。ライブドアは上場廃止となり、日興コーディアルグループは、シティバンクに買収されようとしています。粉飾決算を行なう動機はさまざまですが、偽りの利益は、やはり偽りでしかないのです。
■粉飾決算に見る会計の特徴
ところで、粉飾決算は現代の会計の特徴をうまく利用して行なわれる場合が多々あります。たとえばライブドア事件では、連結決算の対象から除外されるような会社を巧みに利用し、利益を水増ししたと言われています。
そのほかにも、手っ取り早く利益を水増しする「架空売上の計上」という方法があります。架空売上とは、モノが売れてもいないのに「売れた」としてしまうことです。これは、会計の1つの特徴である「発生主義」という考え方を利用した手法といえます。
■「発生主義」という考え方
この、現代の会計のキーワードの1つともいえる「発生主義」について説明しましょう。
会社の利益は、簡単にいえば「売上-コスト=利益」のように、売上からコストを差し引いて計算されます。このとき売上やコストは、実際の収入や支出が生じたときに集計するのではなく、商品を顧客に出荷した時点で売上を、実際にコストが発生した時点でコストを集計することになっています。たとえば、代金が1カ月後に振り込まれる場合にも商品を出荷した時点で売上となり、料金が1カ月後に引落とされる水道光熱費なども、利用した月のコストとなるわけです。
このように、実際の現金や預金の増減があったときではなく、売上やコスト発生の事実があったときに集計するという考え方を、発生主義といいます。
■発生主義と粉飾決算
発生主義は、利にかなった考え方であると同時に、会計を複雑にしている1つの原因であるとも感じます。
代金が振り込まれなくても売上となりますから、書類1枚(というのは極端ですが)で架空の売上を作り上げることも、それほど難しくないということなのです。
コストについても同様です。また、将来予測のもとに金額を見積もる場合もあるので、それが売上やコストとして正しい金額であるかどうか、はっきりと判断できない場合もあります。粉飾決算の多くは、そのような会計数値の特性を巧みに利用しているのです。
さて次回は、もう1つのキーワードとして、会計における「連結」について考えていきます。
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