ABO:会計士平林亮子の経営カウンセリングルーム

公認会計士の平林亮子が、企業経営に関するさまざまな話題を会計の視点から語ります。

2007/02/19

企業の人件費を考える
人件費の固定化とは?

■人件費を広い視野でとらえてみる
 一般的に、企業経営における二大経費とは、「人件費」と「事務所家賃」といわれています。人を雇うためには、前回のブログでお話したような給与や社会保険はもちろんのこと、作業場所やパソコン代、水道光熱費、経理や人事といった労働をサポートするための費用まで必要になります。こうしたことまで考えて人件費を広い視野でとらえてみると、本当に多額になることが分かるでしょう。
 そのため、その人件費を管理することが、いつの時代も企業における重要な経営課題の1つになるのです。

■人件費が固定されることのメリット
 ただ、人件費の管理といっても、削減することだけが目的ではありません。企業の目的の1つは、利益をあげることです。給与を増やしても利益が上がるのであれば何の問題もないのです。逆に言えば、「利益に結びつくかわからない給与」や「利益に結びつかないであろう給与」は払いたくない、ということになるわけです。
 業種にもよりますが、多くの場合、売上は仕事の内容(つまり、商品や製品、提供した業務)で決まるものであり、残業時間に比例して増えるという性質のものではありません。タイムチャージで得意先に請求する場合でも、請求できる時間には限界があるのが普通です。
 売上は契約で決まっているのに、作業時間に応じた給与を支払うとなると、いつまでたっても利益が確定しないという状況が生じます。逆に、あらかじめ従業員への支払額が固定されていれば、利益の見通しが立てやすくなり経営しやすくなるというわけです。
 そう考えると、ホワイトカラーエグゼンプション制度により給与額を一定にすることができれば、企業としても人件費を管理しやすくなる可能性があるのです。その点でも、企業にとって利用価値のある制度になりうるかもしれません。

■企業は収益を分配する「システム」である
 一方で忘れてはならないのは、従業員あっての企業だということ。従業員なくして企業経営はできません。その上、日本の企業においては、従業員と企業との関係は親密で良好なのですから、その利点を十分に生かしていくことが国際競争力の強化にもつながるものと思います。
 企業は利益をあげる組織であると同時に、その利益を従業員に給与という名前で適切に分配していくシステムであると私は考えています。
 もしも、ホワイトカラーエグゼンプションの導入によって、ただでさえサービス残業の多い日本の企業で、一層サービス残業が増えるといった状況が生じてしまうとしたらどうでしょう。それは、適切な企業経営とはいえないのではないでしょうか。
 現時点では、ホワイトカラーエグゼンプション制度には課題が山積みです。日本経団連は、年収が400万円以上の人のほとんどがホワイトカラーとして対象となるなどの年収基準を提言しています。しかし、そうした基準が本来の制度の趣旨にそったものといえるかどうか疑問が残るといった議論もあるようです。
 今後、そもそもホワイトカラーとは何か、対象となるのはどのような職種か、成果とは何なのか、といった点をクリアにする必要があるでしょう。また、本来、給与システムは、企業がその分配方針に基づいて決定すべきものであり、それぞれの企業にマッチした給与体系を考えていくことが大切なのではないでしょうか。

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