2006/10/24
中小企業に潜むワナ
2007年問題と事業の承継 その1
みなさん、はじめまして! 今月からアスキービジネスでブログを始めることになりました、公認会計士の平林亮子です。このブログでは、常日頃から経営者のそばで会社経営を目の当たりにしている経営カウンセラーとしての視点から「社会での出来事が会社経営に与える影響」や「今、会社全体で生じている問題点」などをお伝えしていきます。
さて、第1回目となる今回は「2007年問題」についてお話します。とは言っても、現在マスコミなどで話題になっている、団塊世代が定年退職を迎えることで、知識や技術、経験などが若い世代に受け継がれることなく失われるという問題のことではありません。こうした、技術や知識の“承継”問題を引き起こす2007年問題ではなく、「事業継承」の問題についてお話します。これは、特に中小企業の経営者にとっては深刻な問題なのです。
■中小企業の“承継”問題
「事業承継」とは、企業の経営を誰に、どのように引き継いでいったらいいかという問題です。と同時に、経営者の持つ株をどのように引き継ぐかという問題でもあります。団塊の世代が定年退職を迎えるかもしれないということは、同世代の社長も引退を考えていかなければいけない時期が来ているということ。実際、帝国データバンクの「社長交代率調査」によると、2005年の時点で社長(個人経営の代表者含む)の平均年齢は58歳9カ月とのことですから事態は深刻です。
もちろん、社長の定年は60歳であるとは限りません。しかし、社長であればなおさら、健康であるうちに、その業務を後継者に引き継いでいく必要があるのです。
■事業承継問題に潜む問題点
事業承継問題には、大きく3つの問題があると言われています。
第一の問題点は、そもそも経営者自身が、事業承継問題に対する自覚がない可能性があるということです。特に一代でビジネスを築き上げた経営者などは、「死ぬまで働ける」「まだまだ元気」といった意識が強い傾向があります。実際、私のクライアントである社長さんから「引退など考えていない」と言われたことがあります。お元気な経営者の方は、「引退」あるいは、亡くなられた場合についてのことになかなか目を向けられないでいるのです。また、経営者の引退は周囲からも指摘しにくいものです。
第二の問題点は、中小企業では事業承継を単なる経営者の交代で片付けられないという可能性があるということです。国税庁データによると、日本の中小企業の9割以上は同族会社であるといわれています。つまり、家族が株主で家族が経営者。そのため企業をどうするかという問題は、そのまま身内が持つ株式をどのように承継するか、ひいては身内の財産などをどうするかという相続の問題も同時に解決しなければならない可能性が高いのです。
第三の問題点は、事業承継と一言でいっても方法はいろいろあり、いずれの方法をとるとしても準備にそれなりの時間がかかるということです。企業を存続させるには、①身内が企業を継ぐ、②外部の誰かが企業を継ぐ、③企業を売却する、といった方法が考えられます。①や②の方法であれば、後継者をきちんと育成しておく必要があるでしょう。また、③であれば“売れる企業”としての価値を付けておかなければなりません。
このように、事業承継は大きな問題をいくつも解決しなければならないのです。
■早期の自覚と事前の準備を
企業として経済社会に存在している以上、「いざとなったら倒産させれば済む」というのは無責任な発想といえます。経営者自らが事業承継問題を自覚し、適切な引退時期を見極め、それを実現させるための計画を立てて実施していく必要があるのです。取引先との関係や従業員の生活、残される家族のことを考え、何らかの形で決着をつけることまでが経営者の仕事なのですから。
しかし一方で、事業承継は個々の企業で解決できない問題も数多く存在しています。たとえば、相続に関する制度の問題は、一企業レベルで解決できる話ではありません。そのうえ、日本の企業の大部分は中小企業ですから、事業承継は社会全体の問題ともいえるのです。そのため近年では、社会全体で事業承継問題を解決しようとする取り組みが始まっています。
さて次回は、事業継承に関する社会の動きや、税制面の優遇措置などについてお話します。更新は11月中旬です。お楽しみに!
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