アスキービジネス

ABO:会計士平林亮子の経営カウンセリングルーム

公認会計士の平林亮子が、企業経営に関するさまざまな話題を会計の視点から語ります。

2007/05/07

「領収書は10万円まで」のワケ
固定資産と税金

 前回は、会社で購入する備品が経費としてどのように処理されるかをお話しました。今回はいよいよ、具体的な金額ごとの処理を見ていきましょう。

 備品をはじめ、土地、建物、車両、機械など、会社が長期に渡り使用するような物品は「固定資産」と呼ばれています。前回説明したように、固定資産の購入費用は、原則として購入時に全額を費用とすることはできず、使用期間にわたって徐々に経費としていかなければなりません(土地は減価償却の対象外であり、売却するまで経費にできません)。しかし、少額な備品などについて減価償却という手続きを踏むことは手間がかかりますし、税金の支払の面で、前回見たような弊害もあります。

 そこで、固定資産であっても一定額未満の場合、購入時に全額を経費にできるという法律(法人税法)が設けられています。それが「領収書は10万円まで」の理由なのです。

 まず、10万円未満の固定資産については、支払時に全額経費として処理できます。また、20万円未満の固定資産については、使用期間に関わらず3年間で減価償却できます。領収証の額がいくらかによって、それを全額経費にできるかが変わってくるというわけです。

 これ以外に、一定の要件(おおまかには資本金が1億円以下で、従業員数が1000人以下の中小企業)にあてはまる中小企業の場合、「少額減価償却制度」が利用できます。これは、平成20年3月31日までに購入した30万円未満の固定資産については、支払時に全額経費として処理できるというものです。条件にあてはまる中小企業であれば、ぜひとも活用したいものです。

 ちなみに、詳細説明は別の機会にゆずりますが、固定資産の修繕やメンテナンス費用については、内容によって支払時に全額経費とできるものと、減価償却によって経費にすべきものに分けられます。しかし、減価償却によって経費とすべきような内容の修繕費用であっても、20万円未満であれば支払時に全額経費にできます。よって、この場合も20万円が領収証の取り扱いを分けるポイントになります。

 会社の規定には、さまざまな意味があります。特に金額の基準については、税金との兼ね合いで、各社の事情を超えたところにその理由が存在している場合も少なくないのです。


2007/04/30

「領収書は10万円まで」のワケ
経費と減価償却

 前回は、「領収書は10万円まで」などのルールには税金が関係することをお話ししました。今回は、10万円、20万円、30万円というルールの根拠の前に、領収書の金額が税金とどう関係してくるのかについて見ていきましょう。

 そもそも、会社は売上から「経費」を差引いて利益を計算し、その利益に税率を乗じた法人税(住民税や事業税)などを支払うことになります(厳密には、利益に調整を加えた「課税所得」に、税率を乗じて納付すべき税額が決まります)。そのため、利益が多くなれば支払う税金が多くなり、利益が少なければ税金も少なくなります。違う角度から見れば、経費が多ければ税金が少なくなるということです。

 会社の経費にはさまざまなものがありますが、「領収書は10万円まで」などのルールは、交通費や通信費の支払時ではなく、備品の購入時に大きなポイントとなります。それは、交通費や通信費は支払時に全額が経費となるのに対し、備品の購入費用は原則として、支払時に全額経費とすることはできないからです。備品の購入費用は、備品を使用する期間にわたって、徐々に経費としていかなければならないのです。これを「減価償却」といいます。

 備品の購入費用を支払時に全額経費とできないことは、会社にとっては大きな問題です。なぜなら、実際には購入代金全額の支払いをしてお金は残っていないのに、あたかも多額の利益があるように見られてしまうからです。

 たとえば、売上が100万円、備品の購入費用が60万円、60万円のうち経費にできるのは10万円であるとします。すると、実際に手許に残るお金は、

100万円-60万円=40万円

です。

 一方、税金を支払う際に見る「利益」は、

100万円-10万円=90万円

となります。そして税金は、この利益に対して支払う必要があります。

 たとえば税率を40%とすると、税金は、

90万円×40%=36万円

です。購入費用と実際に経費にできる金額にずれがあるために、40万円しか残っていないお金の中から36万円の税金を支払わなければならないという事態に陥るのです。

 さて次回は、いよいよ10万円、20万円、30万円といったルールがどういった理由でできたのかを明らかにします。


2007/04/23

「領収書は10万円まで」のワケ
権限と予算

 会社の備品などを購入する際、みなさんの会社には「領収証が10万円未満になるようにする」「20万円未満の領収証じゃないと認めてもらえない」などのルールが存在していませんか? ちなみに私の知り合いの会社では、10万円未満の備品の購入は部内の決裁で済むのに、10万円以上の場合には経理部門を通さないと購入できないといったルールがあるそうです。

 実は、10万円、20万円、30万円といった金額を基準にしたルールは、おおよそどこの会社にも存在しています。また、「未満」「以下」という点も厳格に決められていることがほとんどです。なぜ、このような画一的なルールが存在しているのでしょうか?
 第一の理由は、会社のお金を浪費されては困るからです。浪費をしないよう、会社では通常「決裁権限」といったものが定められています。その規定に基づいて、「××円以上なら部長の権限」「××円以上だったら社長の権限」で決裁がなされるというわけです。

 また、浪費をしないという点では、「予算」も大きな力を発揮します。「予算内」の経費であるか「予算外」の経費であるかによって、処理方法に違いがあるといったこともあります。
 会社は、お金を使うことに対して、慎重な意思決定をするもので、領収証の金額に制限を設けることで、浪費をしないよう工夫しているという一面があるのです。

 しかし、それだけなら、10万円、20万円、30万円といった共通の金額が基準になる必要はありません。各社、それぞれの状況に合わせたルールを設ければいいのです。

 実は、領収証の金額に関するルールが存在するのには、もう1つ重要な理由があります。

 それが「税金」です。

 冒頭で挙げた10万円、20万円、30万円という金額は、税金の面で大きな意味を持っているのです。次回は、会社が支払う税金と「経費」の関係を見ていきます。



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